多嚢胞性卵巣症候群
不妊の原因にもなる、小さな卵胞がぎっしりと卵巣内に溜まってしまい、排卵できない状態
<1>月経異常
<2>多嚢胞性卵巣
<3>血中男性ホルモン高値、LHホルモン高値でFSHホルモン正常値
この3つの条件があると多嚢胞性卵巣症候群と診断されます。 小さな卵胞がぎっしりと卵巣内に溜まってしまい、排卵できない状態です。 具体的には男性ホルモンが高く、毛深く肥満で2型糖尿病や高血圧、高脂血症の傾向で、インスリン抵抗性がある人が多い。といわれていますが、日本人の場合はまったくこういった症状がないひとが多く、むしろ痩せていて色白で女性らしいタイプの人が多いのです。 血糖値は正常でもメトホルミンという糖尿病の薬とクロミドの内服が処方されます。
卵はできるが成熟卵胞に育たない原因はいくつかあります。
<1>筋肉量が多く体脂肪率が低い場合は男性ホルモンが高くなりやすい。ダイエット目的で体脂肪率を10%以下に下げると女性ホルモンが分泌されなくなる可能性が大きくなります。「腎精血」が減少すると卵胞を育てる力が不足していきます。
<2>肥満。揚げ物や甘いものの過食は身体に「痰湿」を溜めていきます。からだの中に余分な脂分などが溜まると気血の流れが悪くなり、卵が成長できなくなります。
<3>ストレス。肝の経絡に症状がでます。精神的に不安定でイライラや落ち込みなどの症状が出やすい。PMS(月経前症候群)などもあり、胸の張りや痛み、にきびや吹き出物も出て不正出血なども起こります。
<4>体質虚弱。長期の栄養不良は「気血」の不足を起こし、栄養が充分な血液不足から卵が育たなくなります。冷え性や元気不足とともに風邪をひきやすいとか、不眠などもでます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の症例
高校時代も月経が遅れがちでしたが大学生の頃から月経不順がひどくなり、 半年間も月経が来ないため婦人科を受診したところ、多嚢胞性卵巣と診断されました。肥満傾向で社会人となってからも仕事上生活時間も不規則です。 独身のため積極的な治療はせず、ピルの服用をすすめられました。 服用中は月経も規則正しくきますが、5年以上の服用で不安感が増し不眠の症状も出てきました。
生活が不規則なうえストレスも大きく、食事も外食が中心で間食も大好きということで、なかなかダイエットが成功しません。5㎏は落ちるのですがその先にリバウンドが来るので、ダイエット前より体重も体脂肪も増えてしまいます。にきび様の吹き出物も多いので典型的な多嚢胞性卵巣といえます。卵巣がんのリスクも上がりますので、排卵に向けて卵胞が成熟するように努力していくことにしました。
「肝腎」を補いホルモンの働きを促すとともに、「痰湿」を取ります。「活血」を充分に行うことで気血の流れを良くしながら排泄を促すことで排卵にもつながると考えました。漢方薬の服用を始め1年くらいで月経がきました。婦人科も定期的に受診していただいていますが、良い状況を保っています。月経が来ていると精神的にも安定し、爆食もなくなり体重も落ちてきますからからだを動かしやすくなります。めぐりの良い生活習慣が身に着くようお手伝いをしています。